ヤマーン!コラム

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【インタビュアー・構成/高久裕輝】
今回のYAMAAN! PEOPLE PROFILE
<p>つちや まさる/1957年生まれ。株式会社エルデ代表取締役。アマチュア無線、写真、オーディオなど多彩な趣味を持ち、近年は山登り、フリークライミング、ボルダリングに熱中。システム開発とテクニカルライティングを本業としつつ、趣味が高じて独自にBCAAの研究を始め、国産のBCAAを廉価で提供するサプリメントブランド「PoeweNavi」を立ち上げる。

純国産アミノ酸ブランド「Power NAVI」を展開する株式会社エルデの社長、土屋勝さんにアミノ酸の事について聞いてきました!IT関連会社なのにアミノ酸を作る、そのキッカケとは?

昨年4月のワールドカップ、優勝の野口啓代選手と。Power NAVIは野口さんをはじめ、様々なクライマーをサポートしている。

ーいきなりですが、システム屋さんがアミノ酸を販売するって、ストレンジですよね。

クライミングを始めたころ、雑誌「ROCK& SNOW」に東大スキー山岳部の新井裕己さんが「ハードコア人体実験室」という連載を書いており、いろいろなサプリメントのことなどを紹介していました。2005年にはモンベル渋谷店で開かれた新井さんの講演会「ハードコア人体実験室公開発表会」で、実体験をうかがい、アメリカから取り寄せた数々のサプリメントを目にし、非常に興味を持ったわけです。そこで自分でもいろんなプロテインやBCAAを海外から取り寄せてみました。そのうち、「日本のサプリメントは高いんじゃないか?その状況を自分で変えられないかな?」と考えるようになったんです。個人輸入代行はリスクが少ない。でも小さい規模で安く入れたとしても国内マーケットは変わらない。だったら「自分がメーカーになれば国内のマーケットを変えられるんじゃないか?」と思うようになったんです。

ー自分でブランドを作ってしまおう、というのはすごい決心だと思います。

アメリカなんかはマーケットが大きいし、ワールドワイドに販路を持っているんです。サプリメントをキログラム単位で購入するのがあたりまえで、商品の種類も多く、大量生産すればコストが下げやすい。反面、日本のサプリメントはブランド化することでむしろ値段が上がっている気がしますね。「なんでこんなに高いのかな」って思うほどです。とは言っても、自分でゼロからアミノ酸を作れる訳ではないので、「健康博」などの見本市に赴いて、いろんな会社のパンフレットをもらって見積もりをとりました。OEMで健康食品を作っている会社のなかから「ここなら自分の求める内容のものを求める値段で作れるかもしれない」と思える会社を選んで、2006年の終わりにブランドを立ち上げました。

ーそもそもBCAAというのはどういう機能をもっているんですか?

人体を構成するタンパク質というのはアミノ酸でできています。アミノ酸はだいたい20種類あって、体内で合成できない必須アミノ酸と体内で合成可能な非必須アミノ酸に分かれています。必須アミノ酸というのは人間の体内で合成できませんから、食べ物で取り入れるしかありません。必須アミノ酸は8種類あって、とくに筋肉の主要な構成要素となっているのがBCAAと呼ばれる分岐鎖アミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシンの3つです。

ークライミングや登山において、それを取り入れるとどんな効果があるんですか?

BCAAは筋タンパク質の約2割程度を占めています。そして筋肉で消費され、筋肉のエネルギー源となる唯一のアミノ酸です。運動時には筋肉中のBCAAが分解され、エネルギーとして燃えるわけです。つまり激しい運動をするということは、筋肉そのものを構成するタンパク質を分解して、つまり筋肉を消耗しながらエネルギーを発生させるということになります。ここでBCAAが血液中に大量にあれば、筋肉の損傷を抑え、さらに修復や超回復が速やかに行われるんです。もうひとつは、脳内物質のひとつ、セロトニンの分泌を抑える機能があります。セロトニンは疲労時に集中力を低下させる働きがあるのですが、これを抑えることで例えばコンペなどにおける集中力の持続が期待できます。

黒岳中腹にテントを張り、アンテナを立ててアマチュア無線。機材はトータルで70kgにもなったという

ーBCAAのブランドを作った背景には土屋さんご自身の経験があるとおもうんですが、登山を始めたのはいつ頃なんでしょうか?

じつは小学校から高校時代までは今よりも体重が重い、いわゆる肥満児だったんです。高校に入ってから新聞配達のアルバイトをやって体重は減りましたが、趣味としては音楽をやったり雑誌を作ったり、とにかく典型的な文科系のインドア派でした。体育の授業なんかはとにかくサボることしか考えていなかったし、部活も運動部は避けて通っていました。けれど、アウトドアのスポーツだけは興味があって、たとえば大学時代はオフロードバイクに凝って山道を走り回ったりしていたんです。で、30代のときに、小学校のときからやっていたアマチュア無線を再開して、「山の上から無線を飛ばす」というのをやり始めました。

ー登山というよりは、「エクストリームアマチュア無線」ですね

そうです。最初は山登りという意識はなかったですね。大菩薩連嶺の南端にある黒岳という2000m程度の山に、70kgくらいの発電機やテント、アンテナなどを2回に分けて担ぎ上げ、遠くにある無線局と交信するというのに没頭しました。で、山の上に機材をを担ぎ上げたり下ろしたりと言うのをやっているうちに「あれ、これができるということは登山ができるんじゃないか?」と思うようになったんです。ちょうどそのころ、参加していた異業種交流会のメーリングリストに「趣味が混浴温泉巡りです」という女の子が出現して、登山が趣味の友達がそれに飛びついて、「日本最高所にある混浴露天風呂へのツアーを企画しましょう!」となったんです(笑)

ーそれは盛り上がりますね(笑)

というわけで、みんなで八ヶ岳の本沢温泉に行こうということになって、十数人のグループで登ったんです。これが1999年の秋。純粋な登山をしたのは一泊して雲取山に登ったのが最初で、これがかなりキツかったんですが、おもしろかった。それから深田百名山の存在を知ったり、山仲間のメーリングリストを自分で管理するようになり、関東近郊から北アルプス、南アルプスなど百名山を縦走したりするようになったんです。球技なんかはチームプレイで瞬発力とか反射神経が必要ですけれど、山歩きは黙々とできるスポーツですよね。じっくり前進していればいつか頂上に到達できます。天気がよければ気持ちがいいですし。インドア派だった自分でもできる運動、というのが山歩きなんだと思うんですよね。

今年2月の赤岳山頂

ーなるほど。そこからフリークライミングを始めることになったきっかけというのは?

本格的に登山を始めたのが40歳を過ぎてからでした。それからメーリングリストにいる仲間たちと百名山中心に登りました。30代から40代で、日帰りから1泊程度。最初のうちは経験者の企画に付いていったのが、だんだん自分で企画するようになり、小屋泊まりだったのがテント泊になるなど、のめり込みました。そしてとうとう雪山登山とクライミングに手を出しました。雪山は誰も参加者がいないどころか「危ない山行に初心者が人を誘っちゃダメだ!」と言われたり…… 2月の赤岳とか5月の槍・穂高に単独で行きました。登攀ではなく一般登山道ですが。もう一つの方向が岩登りへの興味関心。「岩登りができればバリエーションルートにも挑戦できるな」と思い立って、7年前くらいに四谷のクライミングショップ、「デナリ」が開催するクライミング講習会を受けたんです。

ー人工壁を使った講習会ですか?

いえ、いきなり奥多摩の天王岩、外岩でした。その流れで何度かフリークライミングに挑戦したのですが、当時はパートナーもいなくて継続して行くことができませんでした。で、ある日自宅の近くにB-PUMP(旧国分寺店)というクライミングジムがあるというので行ってみて、、そこで初めてパートナーがいなくてもできるボルダリングというジャンルを知りました。それからB-PUMPに通い始め、mixiでもクライミング仲間とのつながりが増えてきて、さらにクライマーズハイというメーリングリストに入ったことで一緒にクライミングができるパートナーに巡り会うことができました。

ーBCAAをはじめとするサプリメントはそれから雑誌を読んで興味を持つことになったわけですね。

はい。いろんなメーカーの製品を試しましたが、BCAAというのは一般的にバリン:ロイシン:イソロイシンが1:2:1と言われていて、あとはそれを飲み慣れていない人でもすんなり飲めるよう水に溶けやすい顆粒にするのか、独特の苦みを消すために柑橘系のフレーバーを付けるのか、などといった違いはあるものの、基本的なところはどれもほとんど変わらないらしい、と。さらにこうした加工をすると増量剤なんかで単位重量あたりのBCAAの比率が下がるし、加工コストもかかるのでユーザー側から見るとコストパフォーマンスも悪くなってしまう。ならば、いっそノンフレーバーにして値段をグッと落とした物を開発すれば自分で安価な製品を作れるんじゃないかと思うようになったんです。「飲みやすさはとりあえず置いといて、単価を下げよう」という差別化を図ったんですね。

ーシステム開発とは全く関係ないブランドを自社の中に立ち上げるということをしたわけですが、周囲のリアクションは?

とくにありませんでした(笑)。そこからは工場に発注をかけて、ブランド名を決めたり、パッケージやそのデザインを決めたりというのをしなければいけないのですが、知り合いと協力しながら作っていきました。まあ、むりやり自分の会社、仕事と結びつけるとするならば、これまではクライアントに向けて作っていたeコマースのプラットフォームを自社ブランドのために構築したり、自社サイトではあまり重視していないSEOを意識したサイト運営、販売システムを作るチャンスではありましたね。実際の販促活動はいろんなジムや大会に出向いて試飲会を開いたりと、アナログこの上ないんですが……。

ー唐突ですが、クライマーにはIT関係で働く人が多い印象がありませんか?

そうかもしれませんね。でも体感では東京近郊で働く人全体の中でIT関係の就業人口が多いからそう見えるのかな、という気もします。アーティスト肌のクライマーもなかにはいますが、東京に限って言えばIT関係で働く人がやはり多いんだと思いますよ。それからクライマー界隈っていうのは、やっぱりサッカーやバスケットボールみたいな球技が苦手というか、ソリが合わない人が集まるところなのかもしれないですね。中学生でユース強化選手になった安田あとりちゃんも球技が苦手みたいですし……(笑)。動く物に相対して反射的に動くって言うのは、クライミングとは正反対に位置するスポーツですよね。

ーITに軸足がある土屋さんですから、ユーザーの声もネットを通じてたくさん寄せられているのでは?

たしかにネット環境をメインにしたビジネスなので、いろいろな意見をいただいています。ユーザーからの声に応える、という意味では、昨年からパッケージのフタを被せ式のものからねじ込み式に変更しました。被せ式だと簡単に開けられるのですが、たとえば高所に持って行くと気圧の関係で勝手にフタが開いてしまうことがあるんですよね。それからマラソンやトレイルランニングといった動きのあるスポーツでは粉末だとハンドリングが悪いということなので、チュアブルタイプのBCAAも作りたいと思っています。

ークライミングや登山以外のスポーツでも取り入れられるようになりますね

筋肉を使うスポーツならば効果があるはずなんですが、自転車競技やマラソンなんかだとエネルギー摂取の方に注意が向かっているので、あまり筋肉の消耗を抑えるというところがケアされていない印象があります。それから競技ダンスなどの表現系スポーツもコラーゲンなどのサプリメントが脚光を浴びているみたいですね。クライミングなんかはトレーニング法がきちんと確立していない面もあるのでこうしたサプリメントの研究が進んだという見方もできます。どちらにせよもっとマーケットを広げていきたいな、というのが今後の目標ではありますね。

二子山弓状エリア「ノースマウンテン」(5.12a)にトライする土屋さん

ー土屋さんご自身のクライミングや登山の目標はありますか?

そうですね、今年はフリークライミングで二子山の5.12aをどうにか陥落させたいな、というのがひとつ。登山では北岳バットレスにも挑戦したいと思っています。

関連リンク

Power NAVI
株式会社エルデ

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